レポート

不動産クラウドファンディングとは(3)

2020/04/01

今回は、不動産クラウドファンディング事業(第4号事業者)を行う上でのハードルについて考えてみました。

まず、不動産クラウドファンディングを行う場合、2つのパターンがあることを覚えておいてください。

小規模不特事業者 クラウドファンディング事業者 備 考
小規模1号事業 同左 自社のバランスシート上で小規模不特事業を行い、自社で投資家の募集と匿名組合契約を締結する
小規模2号事業(小規模特例事業者) 4号事業者 不動産の売買、賃貸をするためのSPCを設立し、4号事業者に匿名組合契約の代理媒介を委託する

小規模不特事業は、「小規模1号事業」と「小規模2号事業」があることは、以前のレポートで違いも含めて紹介しました。「小規模1号事業」は最高1億円まで、「小規模2号事業」では最大10億円までの匿名組合契約による資金調達が可能となります。

あくまでも私見ですが、現状の制度では小規模2号事業はファンドとしての組織力が求められ、宅地建物取引業者の方々がクラウドファンディング事業と併せて参入することは困難です。

まず、小規模2号事業に参入する際は、4号事業者の存在が欠かせません。小規模2号事業者は、小規模特例事業者に代わって不動産アセットマネジメントを行います。ここまでは良いのですが、4号事業者の申請要件に、「第二種金融商品取引業」の登録が必要となることが障壁となります。

また、4号事業者は特定の小規模特例事業者だけでなく、他の小規模特例事業者から匿名組合契約の代理媒介業務を受託出来ます。その際には、受託を依頼している小規模特例事業者等の審査ができる体制を整えなくてはなりません。

さらに、クラウドファンディング事業(電子取引)の申請には、プライバシーマークの取得もしくはプライバシーマークに準拠した個人情報保護体制の構築が必要となります。電子取引を行うには、一般財団法人 日本情報経済社会境界(JIPDEC)と国土交通省のガイドラインに従う必要がありますが、これは費用と時間がかかるものになります。

プライバシーマークの取得も選択肢にありますが、専門他社に申請を依頼した場合の費用と時間(商工会議所でも有償支援がありますが、会議所によって金額が大きく異なります)がかかります。

国土交通省の電子取引ガイドラインに従った(プライバシーマークに準拠した)体制を自社で整える方が、電子取引による不動産ファンド運営のノウハウが蓄積できる利点があります。

不動産クラウドファンディングのサイトへのハッキングに対する処置については、JIPDECだけでなく「IPA独立行政法人 情報処理推進機構」のガイドラインも参考にして下さい。

また、クラウドファンディングのプラットフォームを提供するIT会社がありますが、小規模不特事業に許されている資金調達額の規模(特に小規模1号事業者が調達できる1億円という規模)からすると他社のプラットフォームを使うには、安価なプラットフォームを採用しないと経済的合理性がありません。

以前、弊社は大手のプラットフォーム会社にヒアリングを行いました。認知度の高い購買型クラウドファンディングのサイトを委託運営されている会社で、オフィスを伺った際にはITエキスパートの集団という強い印象を受けました。

2019年の話ですが、このプラットフォーム会社の担当者の方々からは、「(小規模ではない)不動産特定共同事業者向けのサービスは提供しているが、小規模不特事業者向けに提供することは考えていない」との回答を頂いています。(小規模ではない)不動産特定共同事業者は資金調達額に制限がないため、IT会社が提供する高額なプラットフォームを採用するだけの採算性があるという背景があります。

このような経緯があるため、仮に安価なプラットフォームが存在する場合は、ハッキングに対する対策と対策の更新が随時施されているか確認をして下さい。

ネガティヴなレポートの内容になってしまいましたが、制度の整備は様々な面で進んでいます。将来的には、小規模不特事業者向けのクラウドファンディングのプラットフォームは提供されるようになると思います。

以上、障壁ばかりを挙げてしまいましたが、改めてポイントまとめました。

小規模1号事業者:国土交通省の電子取引ガイドラインに沿ったクラウドファンディングのサイトを開発・運営するための経済的規模がない。また、個人情報保護体制の構築に相当の費用がかかる

小規模2号事業者:4号事業者として申請する場合は、「第二種金融商品取引業」の取得が必要。不動産クラウドファンディングのサイトを開発・運営、もしくは他社のプラットフォームを採用できる経済的合理性がないケースがある、個人情報保護体制の構築に相当の費用がかかる


ダメだしばかりのレポートは生産的ではないので、前回のレポートでも紹介しました「リアルパートナー3月号」の記事についてコメントします。

以下は、公営財団法人 全国宅地建物取引業協会連合会、公益財団法人宅地建物取引業保証協会の「リアルパートナー3月号(2020年)の記事を引用したものです。

不動産クラウドファンディングでは、事業者が投資した不動産の取得・運営を行うが、物件所在地も公開されているため、築年数から管理状態などの情報を自身で調べることもできる。一般的な不動産投資における「修繕」「入居者管理」などの面倒なコストを、クラウドファンディング事業者に任せられるため手軽に始められる不動産投資であり、出資額に対して配当利回りが期待できる運用商品だという側面もある

この説明を弊社が書きなおすと次のようになります。

クラウドファンディングでの資金調達も選択できる小規模1号事業者が、不動産の取得・運営を行うが、物件所在地だけでなく、築年数から管理状態も開示してくれるため自身で調査する手間が省ける。一般的な不動産における「修繕」「入居者管理」などの面倒な作業を「アセットマネジメント報酬」として配当から差し引かれるが、小規模1号事業者に任せられるため手軽に始められる不動産投資であり、出資額に対して概ね4%程度(税引前)の利回りが期待できる運用商品だという側面もある

小規模不特事業者が取得・運営するのは、小規模1号事業者です。また、匿名組合契約を締結する前には、契約締結前の重要事項説明として投資物件の説明を詳細に行うことが小規模不特事業者に求められています。

余談ですが、投資物件の説明が不十分な事業者に遭遇したことがあります。その不動産特定共同事業者は「匿名組合契約の申込みをしてくれたら物件情報を開示する」勧誘でした。そういう事業者は、投資家に対する透明性に欠けるため、投資先の事業者としては弊社はお勧めできません。

今回のレポートは、不動産クラウドファンディングという点から小規模不特事業に関して説明しました。参入の難易度は高いものですが、新規事業として検討する価値は十分にあると思います。

また、小規模不特事業に参入する際は、小規模不特事業の申請だけでなく、その後の不動産ファンド運営を見据えて複数のスタッフによるタスクチームを組成することを奨励します。例えば、士業に申請の代行を依頼できますが、申請と運営は全くの別のものです。

また、会社のトップも不動産証券化やコンプライアンスに関する知識を学ぶ意欲を持って、そのタスクチームに加わることが望ましいです。

次回は、地域再生に活用されている例をご紹介したいと思います。

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